本づくりを振り返ろうとすると、
「そういえば、あのとき何を考えていたんだろう」
と思うことがあります。
出来事そのものは覚えています。
でも、そのとき何に迷い、なぜその方法を選んだのか。
細かなところになると、記憶は思っている以上に曖昧です。
ところが、残していた文章やメモを読み返すと、そのときの自分が戻ってきます。
「ここで困っていたんだ」
「だから、この方法を選んだんだ」
結果だけではなく、そこへ至るまでの道筋が見えてきます。
本の中にも「記憶より記録」というコラムを書きました。
そして、本ができたあと、その意味を自分自身が実感することになりました。
記録とは、出来事を保存するだけのものではないのかもしれません。
あとから意味を見つけるために残しておくもの。
そのときには失敗にしか見えなかったことも、あとから振り返れば、次の判断に使える材料になっていることがあります。
記憶だけなら、
「大変だった」
で終わっていたかもしれません。
記録があるから、
「何が大変だったのか」
「どうやって抜けたのか」
「そこから何を学んだのか」
まで戻ることができます。
こうして「本ができるまで」を書けるのも、記録が残っていたからです。
記憶は薄れていきます。
でも、記録は未来の自分に渡すことができます。
それもまた、一つの「人生申し送り」なのだと思います。

